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健康診断を受けたものの、結果の見方がよくわからない、再検査と言われたけれどどうすればいいか迷っている——そんな方は少なくありません。この記事では、年齢・ライフステージに合わせた健診の選び方から、結果用紙の正しい読み方、「要精密検査」と判定されたときの具体的な対処法まで、わかりやすくご説明します。毎年の健診結果を未来の健康につなげるための第一歩として、ぜひお役立てください。

はじめに:健康診断が持つ本当の意味
「どこも痛くないし、食欲もある。だから健康診断は受けなくても大丈夫」——そう思って受診を後回しにしている方は少なくありません。しかし、健康診断の真の目的は、今ある不調の原因を探ることではなく、自覚症状が現れる前の段階で病気の芽を早期に発見し、予防することにあります。
高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病の多くは、初期から中等度に至るまで無症状のまま進行します。がんも同様であり、痛みや体重減少といった自覚症状が現れてから受診した場合、すでに病状が進行していることが少なくありません。
厚生労働省が実施した2022年(令和4年)国民生活基礎調査によれば、主要ながん検診の受診率は肺がん検診(男性53.2%・女性46.4%)、胃がん検診(男性53.7%・女性43.5%)、大腸がん検診(男性47.8%・女性40.9%)と、政府が目標として掲げる60%にいずれも届いていません。特に早期発見で治癒を目指せる胃がんや大腸がんの受診率が半数を下回っている現状は、医療現場にとって大きな課題です。
この記事では、年齢に応じた健診の選び方から、結果用紙の正しい読み方、異常を指摘されたときの具体的な対処法まで、分かりやすく解説します。
年齢・ライフステージで選ぶ、受けるべき健康診断

私たちの体は年齢を重ねるにつれて細胞の老化や代謝の低下が進み、注意すべき病気のリスクも変化します。20代と同じ健診を漫然と受け続けるのではなく、ライフステージに合った検査を選ぶことが重要です。
40歳から全員が対象:特定健診(メタボ健診)
「特定健康診査(特定健診)」は40歳から74歳の全員を対象に行われる健康診断で、心筋梗塞・脳卒中といった重大な血管疾患の原因となるメタボリックシンドロームを早期に発見・予防することを目的としています。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満を基盤として高血圧・高血糖・脂質異常などの危険因子が重なった状態です。個々の数値の異常が軽度でも、重複することで動脈硬化が加速度的に進行するのが最大の問題点です。特定健診では、腹囲・血圧・血液検査(脂質・血糖・肝機能)・尿検査などを通じてこれらのリスクを総合的に評価します。
厚生労働省の2022年度(令和4年度)データによれば、特定健診受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドロームの判定基準に該当した人は全体の16.6%(男性13.3%・女性3.2%)に上り、予備群まで含めると約3割が何らかのリスクを抱えていることが示されています。
命を守るがん検診:胃がん・大腸がんを中心に

厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づき、各自治体では科学的根拠のある「対策型がん検診」が提供されています。
胃がん検診は40歳以上を対象に2年に1回の受診が推奨されています。検査方法は、口や鼻から細いカメラを挿入して粘膜を直接観察する胃内視鏡検査(胃カメラ)です。胃カメラは微細な色調変化まで捉えられるため早期がんの発見精度が高く、疑わしい病変があればその場で組織を採取して確定診断へ直接つなげることができます。さらに、胃がんの大部分はヘリコバクター・ピロリ菌の長期感染を背景として発生するため、胃カメラ実施時にピロリ菌検査を行い、陽性であれば除菌治療を受けることで将来の胃がん発生リスクを大幅に下げることが期待できます。
大腸がん検診は40歳以上を対象に毎年1回の受診が推奨されています。入り口となる便潜血検査(検便)は自宅で2日分の便を採取するだけで済み、体への負担はまったくありません。陽性(異常あり)と判定された場合には、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査が行われます。大腸カメラは盲腸から直腸まで全域の粘膜を直接観察し、前がん病変である大腸ポリープを発見した際にはその場で内視鏡切除が可能です。つまり大腸カメラは「がんを発見する」だけでなく、「がんになる前に芽を摘む」という予防的な役割も担っています。
その他、対策型がん検診として肺がん検診(40歳以上・年1回)、乳がん検診(40歳以上・2年に1回)、子宮頸がん検診(20歳以上・2年に1回)が自治体から提供されています。ご自身の年齢に応じた案内が届いていないか、ぜひ今一度ご確認ください。
人間ドックとの違い
職場健診や自治体のがん検診が「法令・指針に基づく最低限の項目で広く網をかけるスクリーニング」であるのに対し、人間ドックは「より詳細で網羅的な全身の健康チェック」です。費用は原則全額自己負担ですが、頭部MRI・腹部CT・腫瘍マーカーなど、通常の健診ではカバーしきれない検査を家族歴や懸念に合わせて追加できます。リスクが多様化する40代以降には、健康への投資として定期的な人間ドックの受診が推奨されます。
健康診断の結果が届いたら:正しい読み方と活かし方

結果用紙のアルファベット判定だけをざっと見て引き出しにしまってしまうのは最も勿体ない行動です。判定の意味を正しく理解し、適切なアクションにつなげることが重要です。
判定区分の意味を理解しよう
日本人間ドック・予防医療学会の基準に基づき、結果は概ね以下のように判定されます。
- A判定(異常なし):すべての検査値が基準範囲内。現在の生活習慣を維持しましょう。
- B判定(軽度異常・支障なし):わずかに基準値を外れているが、治療や再検査は不要。食事・運動への配慮が必要です。
- C判定(要経過観察・生活改善):生活習慣を改善しながら、数か月〜1年後に再検査で推移を確認する必要がある状態です。
- D・E・G判定(要再検査・要精密検査・要治療):何らかの病気が発症・進行している可能性が高い状態です。自覚症状がないからといって放置することは極めて危険です。必ず医療機関を受診してください。
特に注意したい検査項目
血圧は、日本高血圧学会のJSH2025ガイドラインにより、全年齢の降圧目標が「診察室血圧で130/80 mmHg未満・家庭血圧で125/75 mmHg未満」へ統一されました。130/80 mmHg以上の「高値血圧」の段階から脳卒中・心筋梗塞のリスクが有意に上昇するためです。
血糖関連(空腹時血糖・HbA1c)は糖尿病の有無を判断する指標です。HbA1cは過去1〜2か月の血糖平均値を反映するため、一時的な食事の影響を受けにくい重要な指標です。日本人間ドック・予防医療学会の2026年4月施行の新判定区分では、空腹時血糖が126 mg/dL以上またはHbA1cが6.5%以上の場合に糖尿病が強く疑われます。
脂質(LDL・HDLコレステロール、中性脂肪)のバランスが乱れると脂質異常症と診断されます。LDL(悪玉)コレステロールが多すぎると血管壁にプラークが形成されて動脈硬化が進行し、HDL(善玉)コレステロールが低すぎても同様のリスクが生じます。
肝機能(AST・ALT・γ-GTP)は肝細胞がダメージを受けると血液中に漏れ出す酵素の量を示します。「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は痛みを感じにくいため、数値に異常が出た段階ですでにかなりの負担がかかっているサインです。
腎機能(eGFR・クレアチニン)では、eGFR(推算糸球体濾過量)が60.0 mL/分未満の状態が慢性的に続くと慢性腎臓病(CKD)が疑われます。腎機能の低下は自覚症状が出にくいため、数値の変化を毎年追うことが重要です。
「要精密検査」と言われたら
「要精密検査」という文字を見て、重篤な病気が確定したと思い込む必要はありません。これは「スクリーニング検査で通常と異なるサインが出たため、見逃しがないよう詳しく確認しましょう」という前向きなサインです。最も避けるべきは不安から逃れるために放置することです。結果通知書を持参し、速やかに適切な診療科を受診してください。受診先の目安としては、血圧・血糖・コレステロールの異常は一般内科・循環器内科・糖尿病内科、便潜血陽性・胃バリウム異常・肝機能異常は消化器内科、尿タンパク・尿血・eGFR低下は腎臓内科・泌尿器科が適しています。
検診結果を「未来の健康」につなげるために

健康診断の結果は、過去1年間の生活習慣が体にどう影響したかを示す客観的なレポートです。数値に改善の余地があれば、それは本格的な病気を未然に防ぐための絶好のチャンスと捉えましょう。
食事の見直しでは、塩分過多による高血圧リスクを抑えるため外食・加工食品・麺類のスープを控えることが基本です。緑黄色野菜や海藻類を積極的に取り入れ、動物性脂肪や甘いお菓子は控えめにしましょう。適度な運動は、週3〜4回・1回30分程度の有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)が有効で、内臓脂肪の燃焼や血糖値・血圧の安定に効果が期待できます。睡眠の質の確保も重要で、慢性的な睡眠不足は自律神経・ホルモンバランスを乱し、肥満や高血圧のリスクを直接高めます。禁煙とアルコール節制については、喫煙はほぼあらゆるがんと心血管疾患のリスクを高めるため、禁煙外来の活用を含めた早期の禁煙が推奨されます。
また、毎年同じ医療機関で健診を受け、結果を「経年変化」として追うことも極めて重要です。例えば血圧が130/80 mmHg未満の正常範囲内であっても、3年間で着実に上昇傾向を示していれば、介入を検討すべきタイミングと判断できます。こうしたわずかな変化に気づくためには、体質・病歴・生活背景を理解したかかりつけ医の存在が不可欠です。毎年の健診結果を定期的に持参して相談することで、個別の状況に応じた確実な健康管理が可能となります。
まとめ
- 健康診断・がん検診は自覚症状がない元気なうちに受けることが最大の防衛策です。
- 40歳を過ぎたら、特定健診で血管リスクを、対策型がん検診で悪性腫瘍リスクを必ずチェックしましょう。特に消化器領域の胃カメラ・大腸カメラは早期発見とがん予防に直結する強力なツールです。
- 結果用紙の「要精密検査」は病気の確定宣告ではなく、見逃しを防ぐための前向きなサインです。放置せず速やかに専門医療機関へ相談してください。
- 健診結果は毎年の経年変化として追い続け、食事・運動・睡眠の改善と組み合わせて初めて本来の価値を発揮します。かかりつけ医とともに未来の健康を築きましょう。
参考文献
- 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」(JFPA掲載)
- 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」
- 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」(生活習慣病統計)
- 日本人間ドック・予防医療学会「血糖に関する判定区分の改定(2026年4月施行)」
- 日本人間ドック・予防医療学会「検査値による指導区分の基準範囲2025」
※本記事は医師の監修のもと作成されています。気になる症状がある方は、当院までお気軽にご相談ください。
公開日:2026-05-31




